転職は人生の転機であり、退職を決断するまでには沢山悩むものです。そして、ようやく決意した退職を具体的に進める時、最初に訪れる難関は上司や会社に退職の意思を伝える事です。

いきなり退職を申し入れて、会社や上司が二つ返事で退職を受け入れてくれることは、まず無いでしょう。通常は退職の申し入れや意思表示から、退職に向けた相談が始まります。

しかし、一向に退職を受け入れてくれない、会社を辞めさせてくれない状況もあり得ます。せっかく決断したのに、思い通りに進められない、それによって将来のチャンスを失う可能性さえあります。

そこで、仕事を辞めたいのに辞められないときの対処法についてご紹介します。

仕事を辞めさせてくれないよくあるパターン

人手不足などを理由に引き止められる

少子高齢化の影響や業界や地域の特性などから、人手不足になっている会社は多いものです。そのため、人手不足を理由に退職を引き止められるケースはよくあります。

自分が退職する事で、お世話になった会社や同僚に迷惑をかけてしまう。人手不足の状況で退職するのは我儘ではないか。そんな罪悪感や迷いによって、退職を押し通す事ができない場合もあるでしょう。

そんな時には、人手不足の原因を冷静に考えてみましょう。人手を確保するためには、給料や休日などの処遇を整備する事、労働環境を整える事、従業員の働きがいや会社の魅力が大切になります。

つまり、人手不足に陥っているのは、経営者の責任なのです。あなたが我慢して人手不足を補っても、根本的な問題解決にはなりません。まずは、退職する事への罪悪感や迷いを無くしましょう。

その上で、会社や上司に対しては、できるだけ人手不足で困らないように、後任を採用したり、業務を引き継ぐ期間を考えた上で、退職日を相談すると良いでしょう。

損害賠償を匂わしてくる

会社を辞める事によって、会社に迷惑をかけてしまうと感じる人は多いもです。実際に仕事が回らなくなり現場に負担がかかる、場合によっては業績に影響する場合もあるかもしれません。

そこで、会社や上司が損害賠償の請求を持ち出したり、匂わせる事で、退職を引き止める場合があります。損害賠償という言葉を聞くと不安になり、退職を取り下げたくなる事もあるでしょう。

そんな時には、法律的にはどうなのかを確認しましょう。労働基準法の16条では、賠償予定の禁止が定められています。

これは、使用者は労働契約の不履行について違約金を定めることや損害賠償額を予定する契約をしてはならないというものです。

その他には、労働者の過失がある場合は損害賠償の請求もありえます。しかし、その場合でも労働者だけに過失があるのではなく、会社側の過失が考慮される場合が多いものです。

つまり、損害賠償を匂わしてくる場合でも、実際に賠償しなければならない可能性は少ないと言えます。損害賠償という言葉に対しては、慌てずに冷静に対処しましょう。

給料を支払わないと言われた

急なタイミングや忙しい時に退職を申し出て、経営者や上司が感情的になるケースもあります。そんな時に「会社を辞めるなら給料を支払わない。」と言われる事もあるでしょう。

本来、会社は労働者に対して労働の対価である給料を支払う義務があります。退職を引き止める為に、会社が支払うべき給料を支払わないというのは、労働者を脅しているようなものです。

例え無断で会社を辞めた場合でも、会社には給料を支払う義務があります。無断で退職して損害を与えた場合は逆に損害賠償を請求される可能性もありますが、基本的には会社は労働に対する給料を支払う義務があります。

もし本当に給料が支払わなければ、時効になる2年以内であれば、会社に給料を請求する事が可能です。その為、このような引き止め方をされても従う必要はありません。

退職届を提出し、しっかりと退職の意思表示をしましょう。

退職願を受け取ってもらえない

退職の相談をしても、上司が受け入れてくれない。退職の申し出が拒否されてしまう。そのため、退職願を提出しても、上司に受け取ってもらえない。そんな時は、まず退職願と退職届について確認しましょう。

退職の意思表示は法的には口頭でもその効力は認められますが、言った言わないのトラブルを避ける為に、通常は文書で退職の意思表示をします。それが退職願や退職届になります。

退職願は文字通り、退職を願い出るものであり、会社がそれを承諾する事で退職が決まります。また、承諾する前であれば撤回もできます。

それに対して退職届は退職の意思表示をするものであり、会社の承諾も不要であり、撤回もできません。退職願よりも強い意思表示と言えます。

退職願を受け取ってもらえない場合は、相談では無く、退職の意思表示として退職届に切り替えて提出しましょう。それでも受け取ってもらえない場合は、受け取りが証明できるように内容証明で郵送する方法もあります。

懲戒解雇を匂わしてくる

懲戒解雇は会社のペナルティの中でも、最も重いものです。社内の秩序を乱したり、多大な損害を与えた場合に適用されます。しかし、労基法などの法律や現代の日本の社会では、労働者は手厚く保護されています。

通常の解雇でも相当の理由と予告手当などの手続きが必要であり、簡単には解雇できません。懲戒解雇であれば更にハードルは高く、簡単にできる事ではありません。

退職を引き止める為に上司や経営者が懲戒解雇を匂わせる場合、その経営者や上司は感情的になっているか、無知だと言えるでしょう。もし懲戒解雇されても労働基準監督署に相談するなどの対応策があります。

もちろん、急な退職や強引な退職の申し出により会社に損害を与えてしまう場合は、経営者や上司が憤るのも理解できます。その場合は、引き継ぎ期間を設けるなど、会社に迷惑をかけないような最大限の配慮も必要です。

しかし、特に自分自身に落ち度はなく、経営者や上司が感情的に懲戒解雇を匂わせてくる場合は、実際にそれが認められる可能性は低いですから、落ち着いて退職の手続きを進めましょう。

社内規定で1ヶ月は辞めれないと言われた

通常、就業規定や労働契約書には退職について明記されています。よくあるのが、退職の1ヶ月前までに退職を申し出る事、退職願を提出する事、それを会社が承諾して退職が決定するというものです。

これは、突然、退職されると会社としても困るため、業務の引き継ぎ等を考慮して、予め申し出る事を定めています。基本的には就業規定に従って、円満に退職する道を探るのが良いでしょう。

社内規定で1ヶ月前までに退職を申し出る事と定められている場合、社内規定が絶対であり、社内規定に従うべきだと考える上司は多いでしょう。そのため、社内規定を理由に1ヶ月は辞めれないと言われる事もありえます。

もちろん、社内規定を守る事は会社で仕事をする上で大切な事であり、上司の姿勢は正しいと言えます。しかし、民法上では労働契約の解約の申し入れ後、2週間で解約できる事になっています。

社内規定は理解しているが、法令まではよく理解していない上司もいますので、社内規定を理由に引き止められても、すぐに諦めずに、しっかりと法令を確認して対処しましょう。

上司が退職を引き止める理由3つ

仕事上で本当に困る

会社で仕事をするという事は、何かの役割を担っているという事です。あなたが仕事を辞めると、代わりに誰かがその仕事をやらなくてはなりません。

人手不足や採用が難しい職種の場合、しばらく欠員が続く可能性もあり、その間は職場の仲間や上司の負担が増えます。場合によっては仕事が処理できず、業績に影響するかもしれません。

仕事ができる人や活躍している人であればあるほど、退職の影響は大きいでしょう。また、あなたの成長や能力を見込んで、将来の事業計画を立てている場合は、更に困ります。

仕事上で本当に困る場合、上司は一生懸命になって退職を引き止めます。その場合は、できるだけ退職の影響が大きくならないように、引き継ぎをしっかりと行うなど、会社に協力する姿勢で臨みましょう。

自分の立場を守りたい

上司によっては、自分の立場を守りたい為に、退職を引き止める場合があります。現場の仕事がまわらないのは管理者の責任であり、あなたの仕事に穴があくのは上司の責任です。

従業員が定着しない場合は管理者や上司の能力や責任を問われますし、上司の人事評価にも影響する可能性もあります。その事から、このような上司は退職の理由に関係なく、まず退職を引きとめようとします。

自分の立場しか考えていない上司に引き止められても、あなたの心は動かないでしょう。また、いくら上手く説得しようとしても、そのような上司の本音は解るものです。

その場合は、特に上司の引き止めは気にする事は無く、あなたもあなたの将来の事を最優先に考えて、退職を進めましょう。

本人の将来を真剣に考えてくれている

退職の決断をするまで、沢山悩むものです。しかし、自分の性格や仕事の適性をすべて的確に理解している人は少なく、それが正しい決断なのか不安になるものです。そこで大切になるのが第三者の意見です。

つまり、客観的にあなたの事を理解し、アドバイスをくれる存在です。職場の上司は、あなたの仕事ぶりや適性を理解してくれている存在と言えるでしょう。

その為、本当にあなたの将来を考えた上で、退職を引き止める場合もあります。せっかく退職を決断したのに、それを引き止められるのは迷惑だと感じるかもしれません。

しかし、あなたの将来に真剣に考えた上で引き止めてくれている場合は、一度、耳を傾けて、その意見を参考してみましょう。例え退職の意思が変わらなくても、将来に向けて、新しい気付きが得られるかもしれません。

穏便に退職する方法

退職せざるを得ない理由を伝え退職の意思を毅然と伝える

あなたの将来を邪魔する権利は誰にもありません。退職を引き止めて、あなたが希望する将来の道を閉ざす権利は上司には無いのです。その為、退職の意思は毅然と伝える事が大切です。

様々な理由で会社や上司に引き止められても、そこで諦めたり考えが揺らいでしまっては退職できません。退職するという強い意思を示しましょう。

退職の意思は、迷っていたり、曖昧な表現で伝えると、引き止めれば何とかなると思われてしまいます。その隙を与えないように、退職理由と退職を決断した事については、明確に伝えます。

退職理由については、業務内容の不満や職場環境の問題など、改善の可能性のある理由は避けましょう。転勤や配置替え、業務改善を約束する事で、退職を引き止めようとする場合があります。

その為、給料や休日などの処遇の改善、異業種への転職、将来の夢、家庭の事情など、会社や上司ではどうしようもできない理由、対応できない理由が良いでしょう。

上司の上司に直談判する

直属の上司に退職を申し入れても相手にしてくれない。まったく受け入れてもらえない。そんな時には、上司の上司に直談判する方法もあります。

会社の管理職は職位が上になるほど、組織を俯瞰的にとらえたり、客観的な判断ができるものです。特に人事に関しては経験の有無も重要です。その為、上司の上司の方がより話を理解してくれる可能性が高いでしょう。

急な退職の申し入れや繁忙期での退職に対して、上司が感情的になっている場合もあります。そんな時には、上司の上司の方が、より冷静に物事を判断できるでしょう。

また、上司が部下の退職を認めない、受け入れない理由として、自分自身の立場を守りたい、上司からの評価を恐れている事も挙げられます。その場合も、上司の上司に直談判する事が効果的です。

但し、上司の上司に直談判するという事は、上司の管理能力が低いと判断される場合があり、上司から逆恨みされる可能性があります。そのあたりのフォローも、直談判と同時にお願いする事も忘れないようにしましょう。

労働基準監督署に相談することを匂わす

退職を申し入れたのに、会社がどうしても辞めさせてくれない、全く受け入れてくれない。その状態は言い換えると、あなたには仕事を続ける意思が無いのに、会社はあなたを無理やり働かせようとしている状態です。

そう考えると、会社が強引な事をしていると理解できるでしょう。そんな時に相談できるのは労働基準監督署です。労働基準監督署は堅くて相談しにくいイメージを持っている人もいますが、決してそうではありません。

会社が労働者に不当な対応をした時に、労働者を守る機関であり、労働者の相談に対してはとても丁寧に対応してくれます。実際に相談に行けば適切なアドバイスをもらえるでしょう。

また、会社にとっては、労働基準監督署の是正勧告や指導は法令に基づき行われる事から、必ず対応しなくてはならない怖い存在であり、実際の対応もとても手間がかかります。

経営者や上司に労働基準監督署に相談する事を伝えたり匂わす事で、強引な引き止めや、退職の申し出に対する理不尽な対応を改善する可能性もあるでしょう。

法律的に拒否できないことを伝える

民法627条では退職の意思表示(労働契約の解約の申入れ)から2週間を経過することによって退職できる事になっています。しかし、就業規定に退職する場合は1ヶ月前に申し出る事が定められている場合があります。

それによって退職を引き止める事もありますが、就業規定に従わなくても民法に基づいて2週間後には退職できるのです。

また、セクハラやパワハラなどの問題によって退職する場合は即日での退職も可能です。それに対して会社が退職を認めずに強引に労働させると、強制労働を問われる可能性もあります。

このように、法律では基本的に労働者から退職を申し入れた場合、会社がそれを拒否する事はできません。しかし、その事をよく理解していない経営者や上司もいます。

そこで、退職の申し入れに対しては、法律的に拒否できないことを会社や上司に伝えるのも効果的でしょう。

強行突破で退職する方法

内容証明で退職届を送る

会社に退職を打診し、承諾を得ることで退職が決まる退職願と違い、退職届は退職の意思を伝えるものです。退職願は承諾される前であれば撤回する事ができますが、退職届は撤回できません。

それだけ、明確な意思表示であり、効力があるものです。しかし、退職を受け入れない、退職を認めなたくないという理由で、会社や上司が退職届を受け取らない場合があります。

その場合は、退職届を受け取ったという事を公的に証明できる方法として、内容証明で退職届を送ると良いでしょう。退職届は会社に対する退職(労働契約の解約)の意思表示です。

民法では労働契約の解約の申し入れから2週間を経過することによって退職できる事になっています。その為、内容証明で退職届を送ることで、法的にも退職は可能になります。

どうしても退職を認めてくれない場合は、有効な方法と言えるでしょう。

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弁護士に間に入ってもらう

会社を辞めたいのに辞めさせてくれない。これは厳密に言うと労働トラブルであり、どうしても解決しない場合は、法律に則って対処する事になります。

労働基準法や民法などの法律に関しては、書籍やインターネットでも検索できますし、ある程度の知識は得られます。しかし、実際の労働トラブルは様々な状況が考えられ全ての事例が当てはまるとは言えません。

そこで重要なのは、法律の知識と経験であり、法律の専門家である弁護士に相談する事が最も安心です。

弁護士に間に入ってもらうことで、適切な対応が期待できることはもちろん、会社や上司との関係が悪化して冷静な話し合いができない状況でも、自分自身に代わって対処してくれるのは大きなメリットです。

また、弁護士が間に入ることは、強引な引き止めを行っている上司や会社にとっても大きなプレッシャーになります。弁護士に間に入ってもらうのは強行突破の方法として最も効果的でしょう。

まとめ

会社を辞めたくても辞めさせてくれない時、自分の思い通りに行動できず、焦りや憤りを感じる事もあるでしょう。上司や会社からの強引な引き止めや理不尽な対応には毅然とした態度で臨む必要があります。

しかし、退職を引き止められるのはそれだけ必要とされていた証でもあります。引き止められた時は、何故、引き止められているのかを冷静に考えてみましょう。

その上で、退職のタイミングや仕事の引き継ぎなど、できるだけ会社や上司に協力する姿勢で臨めば、スムーズに進みやすいでしょう。

退職は人生の転機ですから、将来を見据えて、まずはできるだけ円満に退社るすことを目指してみましょう。