会社を辞めて空白期間を空けずに転職しない場合に、手続きをしなければいけないのが年金や失業保険の手続きです。
年金については辞めてからでも調べればすぐに手続き方法は分かりますが、失業保険については辞めてから調べても手遅れ・・・なるケースがあります。
ご存知でしたか?失業保険は退職の仕方によって、貰える金額が倍になったりするんです。また、通常退職後は給付されるまで約3ヶ月の待機期間(給付制限)がありますが、待機期間なしにすぐに貰える場合もあります。
できれば、いい条件で失業保険は貰いたいですよね?
そこで、今回は「退職前に知らないと損する失業保険の仕組み」というテーマで、お伝えさせていただきますので、是非最後までご覧になってください。
- 1年以上雇用保険に加入していれば失業保険は貰える
- 入社5年以内の退職で、約3ヶ月分の失業保険が貰える
- 貰える金額は1ヶ月で約12万円~約15万円が平均
- 但し退職後、約3ヶ月の待機期間を経ないと貰えない
※うつ病が特定理由離職者と認められるか先に知りたい方はこちら
失業保険の基本的な仕組みを解説!
この記事の目次
失業保険はいつから貰える?
会社を退職したからといってすぐに失業保険は貰えるわけではありません。退職後、離職票などを持ってハローワークに手続きに行かないといけません。
ですが、手続きに行けばすぐに貰えるわけではなく、手続き後7日間の待機期間を経て、その後3ヶ月の給付制限を終えてからです。
そのため、自分の意思で退職する自己都合退職の場合は、最初にハローワークに行った日から3ヶ月と7日後から失業保険が貰えます。
ここで注意が必要なのが、7日間の待機期間中は1日アルバイトをするのも禁止されている点です。待機期間はあくまでも失業しているかどうかをチェックする期間なので、日雇いでお金を得てしまうと、その日は失業していない日として扱われ、待機期間が1日伸びてしまいます。
そのため、待機期間中は休養期間にあててください。但し、待機期間後の3ヶ月の給付制限期間中は週20時間未満であればアルバイトをしても問題はありません。
アルバイトをする際はハローワークに申告する必要がありますが、支給額が減ったり支給日が遅れることもないので、週20時間未満で短期バイトをするぐらいならOKという認識でいれば大丈夫です。
週20時間以上であれば就職したと判断されるので注意してくださいね。
【失業保険の受給資格】新卒は原則、もらうことはできない!
まず失業保険を受給するには会社の雇用保険に加入している必要があります。給与明細で雇用保険は毎月天引きされていたら問題はありません。
その上で、退職するまでの前2年間で雇用保険の被保険者期間が12ヶ月以上あるのが条件となります。
被保険者期間は、1ヶ月あたりの勤務日数が11日以上であればOKなので、今の会社で休職せず1年以上働いていれば失業保険が貰えます。
そのため、新卒で入社して1年経過していない場合は、失業保険の受給資格はありません。
ですが、自己都合で辞めたのではなく、やむを得ない事情(会社都合や病気やケガなど)で退職した場合は、新入社員でも半年以上の勤務実績があれば受給できますし、退職後に3ヶ月の給付制限もなくすぐ失業保険を貰えます。
会社都合での退職者は「特定受給資格者」、病気やケガなどの退職者は「特定理由離職者」と呼ばれますが、要は退職前に、特定受給資格者や特定理由離職者に該当しないかを必ずチェックする必要があります。
自己都合の退職だと思っていても、ある書類を揃えるだけで特定理由離職者になるケースだってありますからね。特定理由離職者の具体的な条件については後ほど解説致します。
失業保険はいくらもらえる?給付期間は?
上記は、ハローワークでもらった私の失業保険の資格証なんですけど赤枠を見てください。
- 基本手当日額=5,738円
- 給付日数=90日
つまり、私が失業保険でもらった金額の合計は、「5738円×90日=516,420円」ということでした。
これが多いか少ないかはさておき、失業保険の受給額は「基本手当日額×給付日数」で計算します。給付日数については後ほど説明しますので、まずは基本手当日額を計算していきましょう。
基本手当日額の計算方法
基本手当日額は「賃金日額×給付率」で計算します。
賃金日額は「退職前の半年間の給与÷180日」です。尚、残業代や交通費など毎月決まって支払われるものは含めてOKですが、ボーナスは賃金日額の対象外となります。
例えば、毎月の給料の平均がだいたい31万円だった場合は、(310,000×6)÷180で賃金日額は10,333円となります。これに、給付率をかけるわけです。
引用元: 厚生労働省
29歳以下の給付率であれば、80%~50%に該当しますね。どの%を適用するかは計算方法が複雑なので割愛しますが、賃金日額が上がるに比例して給付率は下がっていきますので、賃金日額10,333円なら55%程度で計算してOKでしょう。
となれば、毎月の給料が31万円だった場合の基本手当日額は、「約5,683円=10,333×0.55」となります。
1日に約5700円貰えるということです。1ヶ月で計算すると約171,000円ですね。だいたい平均すると約15万円前後に落ち着くと思います。給料が毎月20万円で、1ヶ月で約13万円となりますね。
基本手当日額が計算できれば、次は給付日数を調べましょう。失業保険の受給額のトータルは、「基本手当日額×給付日数」で計算しますからね。
給付日数
給付日数に計算方法はなく、自己都合退職かどうかで日数が変わってきます。以下の条件で退職した場合は、給付日数が優遇される場合があります。
- 特定受給資格者・・・会社の倒産など、会社都合の退職
- 特定理由離職者・・・結婚に伴う転居や病気やケガなどによる退職
年齢 | 1年未満 | 1年~5年 | 5年~10年 | 10年~20年 | 20年以上 |
---|---|---|---|---|---|
全年齢共通 | – | 90日 | 120日 | 120日 | 150日 |
年齢 | 半年~1年 | 1年~5年 | 5年~10年 | 10年~20年 | 20年以上 |
---|---|---|---|---|---|
30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | – |
30歳~35歳 | 90日 | 90日 | 180日 | 210日 | 240日 |
35歳~45歳 | 90日 | 90日 | 180日 | 240日 | 270日 |
45歳~60歳 | 90日 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 |
60歳~65歳 | 90日 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
前述した通り、新卒は自己都合退職では1年以上働いていないと失業保険すら貰えません。そのため、あなたが新入社員であれば、次にお伝えする特定理由離職者の条件に当てはまらないかをチェックしてください。
会社都合や特定理由離職者の条件とは?
私は前職で特定理由離職者の条件に合致していたため、給付制限なしにすぐに失業保険を貰えました。
ただ、会社都合はさておき、特定理由離職者は退職後に手続きをしても認定されないケースもあるので、必ず退職前に自分が条件に合致しそうかどうかをチェックしてください。
先に、特定受給資格者(会社都合)の条件を見てみましょう。
特定受給資格者の条件
・倒産(破産、民事再生、会社更生等の各倒産手続の申立て又は手形取引の停止等) に伴い離職した者・事業所の廃止 (事業活動停止後再開の見込みのない場合を含む。)に伴い離職した者・事業所の移転により、 通勤することが困難となったため離職した者・解雇 (自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇を除く。)により離職した者・労働契約の締結に際し明示された労働条件が事実と著しく相違したことにより離職した者・賃金(退職手当を除く。)の額の3分の1を超える額が支払期日までに支払われなかったことにより離職した者・事業主から直接若しくは間接に退職するよう勧奨を受けたことにより離職した者 (従来から恒常的に設けられている 「早期退職優遇制度」 等に応募して離職した場合は、 これに該当しない。)
引用元: ハローワークインターネットサービス
会社が経営不振で給料が遅配されるようになってきてしまったため、不安を感じて退職しました。仕事自体はやりがいがあったのですが、将来性がないのが見えてしまったため辞めることを決めました。
例えば、上記のケースは給料遅延で会社都合になるということです。他にも条件はありますが、ここで重要なのが場合によっては証明書類を用意する必要があるという点です。
会社の倒産であれば書類は特に必要はありませんが、労働契約と実際の労働条件が異なる場合、「雇用契約書・就業規則・給与明細」の書類が必要になるケースが多いです。
入社前は週休2日と説明されたけど、蓋を開けてみたら週休1日だったなんてのはありえない話ではないですからね。残業代未払いなんかもそうです。
自分で「会社都合」と判断できない場合は、辞める前に必ず電話でもいいので最寄りのハローワークに確認するようにしてください。
では次は特定理由離職者の条件を見てみましょう。
特定理由離職者の条件!うつ病でも対象となります!
(2) 妊娠、出産、育児等により離職し、雇用保険法第20条第1項の受給期間延長措置を受けた者(3) 父若しくは母の死亡、疾病、負傷等のため、父若しくは母を扶養するために離職を余儀なくされた場合又は常時本人の看護を必要とする親族の疾病、負傷等のために離職を余儀なくされた場合のように、家庭の事情が急変したことにより離職した者(4) 配偶者又は扶養すべき親族と別居生活を続けることが困難となったことにより離職した者(5) 次の理由により、通勤不可能又は困難となったことにより離職した者 (a) 結婚に伴う住所の変更 (b) 育児に伴う保育所その他これに準ずる施設の利用又は親族等への保育の依頼 (c) 事業所の通勤困難な地への移転 (d) 自己の意思に反しての住所又は居所の移転を余儀なくされたこと (e) 鉄道、軌道、バスその他運輸機関の廃止又は運行時間の変更等 (f) 事業主の命による転勤又は出向に伴う別居の回避 (g) 配偶者の事業主の命による転勤若しくは出向又は配偶者の再就職に伴う別居の回避
引用元: ハローワークインターネットサービス
母親は糖尿病の上に介護が必要です。家に誰もいないため自分が親の介護をしなくてはいけません。それを毎日続けているうちに精神的に病んできてしまい、会社を辞めることになりました。
職場の環境はよかったので、結婚しても子供が授かるまでは続けて行こうと思っていた。しかし、旦那の会社の都合で県外に転勤になってしまい、引っ越す事になったので退職しました。
上記のように、親の介護や旦那さんの転勤で辞めざるを得なくなったというのはよくある話でしょう。ただ、こういうケースは想像できることなので、特定理由離職者に該当するかどうか悩むことはないです。
注目すべきは下記の条件です。
(1) 体力の不足、心身の障害、疾病、負傷、視力の減退、聴力の減退、触覚の減退等により離職した者
引用元: ハローワークインターネットサービス
例えば、上司のパワハラが原因でメンタル的に追い込まれて退職した場合は、上記の条件に該当するのでしょうか?下記のケースも特定理由離職者として認められるのでしょうか?
潰瘍とともにうつの症状が出始め、仕事を考えると眠れない吐き気がする症状が続き退職を願い出ました。翌月末までは就業してくださいとのことだったのですが、体調は不良のまま、頭も働かずミスも減らないまま、退職に至りました。
答えは、診断書があれば認められます。実は私も、上司のパワハラが原因で退職するに至ったのですが、退職後ハローワークの職員に「医師の診断書」があれば、特定理由離職者として認められると言われました。
これはつまり、退職前に病院に行っていなければ、特定理由離職者として認められないということです。なので、自分でもうつの症状が出てるという自覚があるなら、辞める前に必ず心療内科に行き診断書をもらってください。
ちなみに、うつでもないのにそれを装って診断書をもらうのはNGですよ。
特定理由離職者が認められれば、前述したように「新卒でも半年以上働けば失業保険を貰える」「3ヶ月の給付制限がない」というメリットがあるので、もし該当するか不安なら、退職前にハローワークの職員に相談するようにしてください。
「◯◯があれば認められますよ」とアドバイスしてくれますよ。
また、うつ病×診断書で会社を即日退職することが可能なので、詳しくは以下の記事をチェックしてください。
公共職業訓練を利用すれば受給期間を延長でき、2倍以上もらえることもある!
上述した通り、私の失業保険の給付日数は90日でした。ですが、これを2年以上に延長できる方法もあるんです。それが、職業訓練です。
もちろん、失業保険の資格があるのが大前提なので、新卒3ヶ月で辞めて職業訓練を利用すれば、失業保険の資格も貰えてということにはなりません。
職業訓練では、●就職に役立つ知識や技能を無料で身につけることができます。資格取得のチャンスもあります。●主に雇用保険の受給ができる方を対象とした 公共職業訓練と、主に雇用保険の受給ができない方を対象とした 求職者支援訓練 があります。●訓練期間中、雇用保険の受給期間の延長や、月10万円の手当が支給される場合があります。
引用元: 兵庫労働局
- 給付制限3ヶ月が免除され、訓練初日より失業保険が貰える
- 公共職業訓練を受けている間は失業保険の給付が延長される
- 専門職の技能・資格が身につき再就職が有利になる
つまり、公共職業訓練を利用すれば、失業保険を貰いつつ、再就職に有利な資格なども取得できるというわけです。公共職業訓練は長いもので2年のコースもありますからね。これはとてつもないメリットですよね?
但し、手を挙げれば誰でも公共職業訓練を受けれるわけではなく、選考試験があります。定員割れしている場合は、選考試験はありません。
要は、やる気があって技術を習得できる可能性がある人しか訓練は受けれません。
ですが、管轄のハローワークにもよりますが、「WEB・製造業・介護」などその地域にある専門学校と連携しているので、自分の興味のあるコースがある可能性は高いです。
授業を無料で受講もでき、資格も取得でき、お金も貰える。こんなメリットしかない制度、本気で勉強したいコースがあれば、絶対に利用すべき制度ですよ。
但し、1点注意点があります。それが、給付日数が訓練開始日の時点で残っていなければいけない点です。
例えば、給付日数が90日・120日であれば1日、150日であれば31日残っていなければいけません。そのため、コースの面接時に日数が残っていても、訓練開始日に残っていなければ延長給付は受けることができません。
また、給付制限3ヶ月の免除は確かにメリットですが、給付残日数ギリギリに受講しないと最大限のメリットは得られません。なぜなら、職業訓練を受けている期間中に失業保険の給付日数が終了した場合、後は訓練期間の延長分しか失業保険をプラスで貰えないからからです。
例えば、給付日数が90日だとして、給付0日目に90日の職業訓練を受けたとします。となれば、貰える失業保険は90日と変わりません。
ですが、給付80日目に職業訓練を開始した場合は、通常の90日分にプラスして80日分の失業保険が貰えることになります。
そのため、訓練コースの日程から逆算して退職日を決定するのも1つの方法です。申込期限の問題もありますからね。3ヶ月~6ヶ月コースは、訓練開始日の2ヶ月前が申し込み申込期限。1年~2年の長期コースは、受講日の4ヶ月前に申し込みが締め切られるケースもあります。
それと、職業訓練は、1年に1度しか受ける事ができない点も注意が必要ですよ。
コース一覧とそのスケジュール詳細については、最寄りのハローワークに行けば確認できるので、一度足を運んでみてはいかがでしょうか?
特定理由離職者の相談もしたいというなら尚更、面倒ですが足を運ぶようにしましょう。
まとめ
失業保険はその使い方によって、あなたの将来が変わるといっても過言ではありません。
特定理由離職者や職業訓練の仕組みを知ることで、前向きに仕事を辞めるという決断ができるかもしれません。いい再就職先が見つかるかもしれません。
なので、辞めてから転職先を探そうとお考えの場合は、しっかり失業保険の仕組みを理解した上で退職するようにしてください。
失業保険の申請方法については退職時に会社から受け取った書類などを持っていくだけですが、「会社の辞め方の手順!(失業保険の手続き)」の記事で触れていますのでご心配の場合はご参考にしてください。
それと、傷病手当金という制度はご存知でしょうか?
これは、社会保険から貰える手当金で、病気やケガなどで休職・退職した際に、給料の2/3を最大1年6ヶ月毎月貰えるというありがたい制度です。
傷病手当金を貰った後に失業保険を受給するという方法もありますので、もし病気やケガなので退職予定の方は、以下の記事もご覧になってください。