退職が決まったら、次に行うべき事は仕事の引き継ぎです。仕事の引き継ぎが上手くできない場合、それが原因で退職を引き止められたり、退職日などのスケジュールの変更を余儀なくされる可能性もあります。

当サイトでは退職者100名にアンケートを実施しましたが、上記の通り退職前に引き継ぎが不安に思っている人は非常に多いことが分かります。

そのため、仕事の引き継ぎがしっかりできていないと、残った人達に迷惑をかける事になり、最後の最後に自分自身の評価を下げ、後味の悪い退職になる可能性もあります。

つまり、仕事の引継ぎをスムーズに行う事ができれば、退職もスムーズに進める事ができます。退職において、仕事の引継ぎはとても大切な事なのです。そこで、退職時の引き継ぎの方法について整理しましたので、ご参考にしてください。

引き継ぎは義務!損害賠償に注意が必要!

どうせ退職するのだから、その後の事は知らない。会社や職場に対する不満が退職の理由だから、会社や職場を困らせてやりたい。面倒だから引き継ぎをしたくない。

そのような考えで、退職時の引き継ぎは必要ないと考えている人もいるでしょう。しかし、引き継ぎは義務であり、引き継ぎを故意に行わずに会社に損害を与えた場合は、損害賠償を請求される可能性もあります。

引き継ぎにはどのような義務があるかと言うと、「信義則上の義務」です。これは、社会の共同生活において、権利の行使や義務の履行に関してはお互いの信頼や期待を裏切らないよう誠実に行う事を指します。

つまり、相手を裏切り、迷惑をかけてはいけないという事です。考えてみれば、社会人として当然の事であり、冷静に考えれば理解できる事です。

その他には、就業規則や雇用契約書で、退職時には引き継ぎを行う事を定めている場合もあります。この場合、それを守らない事で懲戒処分の対象になり、退職金の減額などのペナルティが発生する可能性もあります。

いずれにしても、退職時に仕事の引き継ぎをしなければ、会社や職場に迷惑をかける事は容易に想像できるでしょう。

損害賠償に発展する事態はもちろん、そこまで大ごとにならないとしても、相手に迷惑をかけるという事は、自分自身に対しても何らかの不利益がある事を理解しておきましょう。

引き継ぎでよくあるトラブル

時間が足りず引き継ぎが終わらない

女28歳 経理事務

繁忙期と重なったため、自分の仕事をこなしながら、引き継いでくれる人に教えるのが大変だった。

引き継ぎの時間が足りずに仕事が引き継げない、引き継ぎが終わらず退職日が伸びてしまう。引継ぎができないまま退職して迷惑をかけた。そのような事はよくあります。

その最も大きな原因としては、引き継ぎの計画性が無い事が挙げられます。言い換えると、引き継ぎのスケジュールが出来ていない、もしくは適当なスケジュールを組んでいる状態です。

また、しっかりとしたスケジュールができていても、引継ぎには相手がいる為、その理解度や仕事の都合によっては、予定通りに進まない事もあるでしょう。

その場合は、引き継ぎの進捗状況に合わせて、スケジュールを見直す事も大切になります。

時間が足りずに引継ぎが終わらない。そんな状況を防ぐ為に大切な事は、引き継ぎのスケジュールと進捗状況に関して、職場の上司や引き継ぐ相手と共有する事です。

引き継ぎを行わずに退職した場合、最終的に困るのは残された人達です。つまり、職場の人達や引き継ぐ相手が困るのです。その為、スケジュールや進捗状況を共有し、周囲を慌てさせる、その気にさせる事も大切です。

尚、周囲に対しては、例え引き継ぎが終わらなくても退職日を変更しない、計画通りに退職するという強い意思表明をする事も大切です。それにより、周囲も引き継ぎに対してより真剣に取り組んでくれるでしょう。

後任者が未経験や後任者が決まらない

男27歳 製造業

自分の仕事の後を引き継いでくれる人が、なかなか決まらなかったのと決まったあとの仕事内容などを教えるのが大変でした

仕事を引き継ごうとしても後任者が未経験者で思うように進まない場合や、後任者そのものが決まらず引き継ぎが進まない事もあります。しかし、それでも先に進めなければ予定通り退職できません。

後任者が未経験者の場合は、口頭での説明だけでなく、できるだけマニュアルや資料を準備しましょう。未経験者に限らず、人からの説明はその場では解っているつもりでも、意外に頭に残っていないものです。

経験者であれば、それまでの経験によって、ある程度の応用ができたり、勘が働きますが、未経験者ではそれも期待できません。その為、あとから確認できるようにマニュアルや資料を準備しておくのです。

物事は頭で解っているつもりでも、経験してみて初めて気付く事は多いものです。伝える側の心構えとして、言っても全ては伝わらない、すぐに理解できない、それが当たり前。そのように考えておきましょう。

後任者が決まらない場合、引き継ぐ相手がいない為、引き継ぎが遅れたり、場合によっては退職日が伸びる可能性もあります。しかし、退職を受け入れたのであれば、仕事の後任を準備するのは会社の責任と言えます。

悪質なケースでは、退職日を伸ばすために、後任者を意図的に用意しない事も考えられます。あくまでも退職日を伸ばさない、計画通りに退職するという強い意思を持つ事が大切です。

その上で、上司に仕事を引き継いだり、説明する、マニュアルや説明資料を準備するなど、できる範囲で引き継ぎの準備をしましょう。

作業マニュアルをどのレベルまで仕上げるべきか

女32歳 コールセンター

仕事の引継ぎが作業マニュアルだけで説明するのは難しく、次の方と実際やりながらお教えしたかったのですが日程が合わずマニュアルを文章化するのが大変だった。

引き継ぎの作業マニュアルを作成する際、どのようなレベルまで仕上げるのか、どこまでの内容まで盛り込むのか、悩むものです。その場合、職場にマニュアルや資料がある場合は、それらを参考にしましょう。

参考にするものが無ければ、自身で仕上げる事になります。マニュアル作成でまず気をつけたいのは、自身の仕事のやり方が正しいか、本当のルールなのか、という事です。

仕事は慣れてくると自分のやり易い方法で進めるものです。それが正しいルールであれば良いですが、場合によってはルールを逸脱していたり、必要な作業が省略されている場合があります。

そこで、作業マニュアルを作成する場合は、その途中や完成した時点で、上司に内容を確認してもらいましょう。

マニュアル作りでは、できるだけ仕事のコツや自身の経験を残しておくと良いでしょう。仕事の経験を通して得られる知識やスキルは多いものです。特に実際に発生したクレームやミス、事例は大いに役立つでしょう。

綺麗に読みやすいマニュアルを作るために、時間をかけてしまいがちですが、大切なのは中身です。引き継ぎ期間は限られていますので、体裁よりも内容を重視しましょう。

引き継ぎが不十分で退職後に問い合わせがくる

男29歳 営業事務

新しい人が入ってくるのが私の辞めた後だったので、退職後の問い合わせがきて大変だった。

引き継ぎが不十分で、仕事に支障が出る場合、退職後でも仕事の問い合わせが来る可能性があります。引き継ぎが不十分になった原因が自分にある場合は、申し訳ない気持ちも手伝い、対応する事もあるでしょう。

しかし、これは決して当たり前の事ではありません。例え限られた期間しかなく、十分な引き継ぎができなかった場合でも、あなた自身がその責任を感じすぎる必要はありません。

何故なら、会社を退職する事は法的にも守られている労働者の自由であり、会社には自社の業務が滞りなく行われるように管理する責任があるからです。もちろん、これは誠実に引き継ぎを行う事が前提です。

尚、通常は退職者に仕事の問い合わせをするのは、避けたいと思うものです。それでも、問い合わせをしてくるのは、余程困っているか、重大な内容の可能性もあります。

その場合は、できるだけ真摯に対応しましょう。逆に、安易な内容で問い合わせが来たり、気軽な感覚で頻繁に問い合わせが来る場合は、対応できない事を伝える事も大切です。

また、退職した事を知らない取引先から、直接問い合わせが来た場合は、退職した事を説明し、できるだけ丁寧に会社へ引き継ぎましょう。

引き継ぎの基本的な流れ

引き継ぎのスケジュールを立てる!引き継ぎ期間は2週間が平均!

退職者にアンケートを実施した結果、引き継ぎにかかった時間は2週間と回答された方が最も多かったです。次いで1週間です。長い方で2ヶ月回答された方もいました。

ですが、退職時の引き継ぎは退職日が決まっている事もあり、限られた期間の中で行う事になります。退職日の時期や後任の決定、仕事の状況などにより、引き継ぎ期間は変わってきます。

短期間で引き継ぐ事もありますし、長い期間で余裕を持って引き継ぐ事もあります。短期間で引き継ぐ場合は、慌ただしくなりがちで引き継ぎの漏れが発生しやすくなります。

しかし、長い期間で引き継ぎを行う場合でも、期間に余裕がある事で緊張感が薄れてしまい、大切なポイントを漏らしたり、気づいたら退職日が迫っていてギリギリになって焦って引き継ぐ事もあります。

そこで大切なのは、引き継ぎのスケジュールを立てる事です。まずは退職日から逆算して全体の引き継ぎ期間を把握します。退職までは通常の業務も発生しますから、引き継ぎに使える時間を確認します。

そこでは有給休暇の取得も考慮しましょう。次に、後任者がどれだけ引き継ぎの時間が確保できるのかを確認します。その上で、引き継ぐ仕事の内容をスケジュールに落とし込んでいきます。

引き継ぎのスケジュールは後任者はもちろんですが、上司や職場の関係者にも周知しましょう。周囲が引き継ぎのスケジュールを共有する事で、引き継ぎに対して協力を得られやすくなります。

仕事の棚卸をする

仕事の引き継ぎでは「何を引き継ぐのか」が大切になります。これは当然の事ですが、意外と曖昧になっている事が多いものです。何故なら、仕事とひとことで言っても、人によって大小様々な仕事を抱えているからです。

そこで、まずは仕事の棚卸をしましょう。自身が行っている仕事をすべて書き出してみます。その上で、仕事の重要度、優先順位を付けます。

重要度や優先順位をつけるコツとしては、

  • その仕事は自分しかできない事か
  • 他の人でもできる事か
  • 自分が担当している仕事か
  • 手伝っている仕事か

などの視点で整理すると良いでしょう。

進行中の仕事がある場合は、仕事の締切や進捗状況、現時点までの問題点や課題など、現在の状況を明確にします。もちろん、進行中の仕事は引き継ぎ期間中に責任を持って終わらせておくと良いでしょう。

仕事の棚卸ができたら、念の為に上司や職場の人達にチェックしてもらうと良いでしょう。第三者の目で漏れが発見できますし、仕事の優先順位については上司に確認する事でより正しい内容になるでしょう。

マニュアルや資料を作成する

女(ad)34歳 メーカー営業

一つ一つの作業について全部マニュアルを作って部署内で共有しておけば、単に引き継ぎのためだけでなく急に誰か休んだ時も役に立つので良いのではないかと思った。

仕事の棚卸をして、引き継ぐ仕事が明確になったら、次に、それを文書化したマニュアルや資料を作成します。時間に制限がある場合は、仕事の優先順位に沿って進めます。

仕事は経験して初めて気付く事、やってみないとわからない事が沢山あります。引き継いだ時は理解したと思っていても、実際にその仕事をやってみて想像と違う事や、戸惑うことは多いものです。

その為、後から仕事の手順や注意点が確認できるように、特に、ミスを起こしやすいところや、クレームが発生しやすいところなどはできるだけ詳しく、引き継いだ人の姿を想像して作成しましょう。

マニュアルや資料はできるだけ引き継ぐ前に準備しましょう。実際にマニュアルや資料を見ながら引き継ぐと、引き継ぐ相手もより理解が深まり、後から引き継いだ内容を思い出し易くなります。

また、引き継ぎをしながら内容の修正や追加をする事、後任者が自分なりにポイントを追記する事で、より使えるマニュアルが完成するでしょう。

後任者へ引き継ぎを行う

女(ad)28歳 製造業

後任者が納得できるよう、一度最後まで一緒に作業してみる。自分がやって見せて、次にやらせる、1つの事が完璧にできるようになるまで繰り返し、できるようになったら次のステップに進むように引継ぎをします。そして何より、後任者とのコミュニケーションを大切にしてください、

マニュアルや資料を準備したら、次は実際に引き継ぎを行います。引き継ぎでは、実際の作業を見せるだけでなく、後任者に作業を体験してもらいましょう。

マニュアルや言葉で仕事のルールや手順を理解する事は大切ですが、その上で、実際に体験する事で、仕事の難しさやコツなどを感じ、より仕事の理解が深まります。

後任者が経験者か未経験者かによっても、引き継ぎの内容は変わってきます。経験者であれば、仕事の基本は理解していますので、注意点や変更点を中心に説明するだけでも良いでしょう。

未経験者の場合は、仕事のルールはもちろん、その仕事の目的、次工程への影響なども説明する必要があります。いずれにしても、スムーズな引き継ぎには、経験の有無や性格など、後任者を理解するが大切です。

通常業務が忙しい、後任者との調整ができないなど、落ち着いて引き継ぎができない時があるかもしれません。また、後任者の憶えが悪く、苛立つ事もあるかもしれません。

そんな時には、後任者を責めないで、引き継ぎは自分自身の退職の為に行うという事を思い出し、後任者には親切丁寧に引き継ぐ事を心がけましょう。

社内・社外へ周知する

後任者への引き継ぎを始めたら、同時に社内・社外への周知を進めます。社内では営業所や他部署など、関係する部署、社外では取引先対して退職する事と後任者について連絡します。

退職予定は自分から説明しなくても、相手に伝わる可能性はありますが、それでも自分で説明した方が良いでしょう。

その際、あなたが退職する事に対して、仕事上で不安に感じる事や、後任者に対して引き継いで欲しい事を確認しましょう。それを引き継ぎに反映させる事で、よりスムーズな引き継ぎができます。

取引先に対しては、できるだけ後任者と同行して、直接、相手に退職の報告と後任者の紹介を行います。取引先は、担当が変わることで仕事上の問題は無いか、後任者がどんな人なのか気になるものです。

取引先にこれまでお世話になったお礼を伝える事、後任者を直接紹介して安心してもらう事は、今後の取引を継続する上でも、後任者が仕事をしやすい環境を作る上でも大切な事です。

まとめ

立つ鳥跡を濁さず。退職における仕事の引き継ぎは、まさにこの諺があてはまります。引き継ぎをしっかりと行わなければ、社内・社外を問わず、残った人達に多大な迷惑をかける事は明らかです。

また、引き継ぎの姿勢を周囲の人はよく見ています。退職するから後の事は関係無いという姿勢では、周囲の評価を下げ、職場の人間関係も悪化し、後味の悪い退職になります。

退職までの期間はその職場、仕事の締めくくりです。引き継ぎは、最後までしっかりと仕事の責任を果たす事、残った人達の事を考えて取り組む事で、気持ちよく退職できるでしょう。