「船員はやめとけ」と言われがちですが、サラリーマンを退職したあとなかなか定職が見つからなかった私は親族が経営する海運業に誘われ「海の男」という漠然としたイメージを抱いたまま船乗りになりました。

簡単な面接と身体検査ですぐに「船員手帳」が交付され週3回離島へ荷物を運ぶ貨物船の乗組員になり、数年後試験を受け「海技士」の免状を取得しました。

「船員手帳」は拍子抜けするくらい簡単な手続きだけでしたが、船長免許として取得した「海技士」免状の勉強は、独学だったせいもあり決して易しいものではありませんでした。

ただ、実際の現場は学んだ内容とはまったく異なる現場でした。船員を辞めた今でも覚えていることは、船長は「積荷」「船体」「乗組員」のすべてに対して全責任を負うということや海は右側通行ということくらいですが、最近働き始めた土木の現場で周囲の人間に船乗り時代の話をしても、あまりよくわかってもらえません。周りからは「船乗りの方が給料も年金もいいのに、なんで辞めてしまったの?」とよく言われます。しかし、私にとって船員時代の十数年は心も身体も削られる過酷な日々でした。

今もいろいろなタイプの船が運航しています。それぞれの職場でそれぞれの悩みがあると思いますが、この記事が船員からの転職や船員としての適性等を考える人の助けに少しでも なれば幸いです。

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「船員」を辞めたくなった理由…なぜ、船員はやめとけと言われるのか?

不規則な生活で体調を崩した

夜の航海の見張りは睡魔との戦いでした。中にはいつも居眠りしているのにまったく事故を起こさない稀有な船員もいましたが、船長ともなればそうはいきません。

眠気覚ましの多量のコーヒーで胃が荒れましたし、出港時、入港時、当直とこまぎれの睡眠時間のため、常に寝不足の感じが抜けず、目覚めた時 疲労がとれたと実感する瞬間はほとんどありませんでした。

また、風速20ḿ程度の時化の航海中は当直時間にとらわれず常にブリッジに立ちましたから年齢を重ねるほど入港後の疲労はひどくなりました。

家族との関係が変わってしまった

船の運航形態によってはもっと大変な場合もあるのでしょうが、私は月曜から土曜のうち3日しか家で寝ず、日曜日も疲れてなかなか起きれないことが多かったです。当然 子供たちと過ごす時間は減りました。

あの頃、子供たちから「なんでお父さんがそんなこと言うの?」と言われたことがあります。「宿題やってないでしょう。宿題終わらせて それから遊びに行きなさい。」という私の言葉にまるでいつも家にいないお父さんからそんな説教されるのは心外だという雰囲気の反発でした。

私は愕然としました。あまり家にいないし 確かにすれ違いも多いけれど、仕事が忙しいのだから仕方ないしわかってくれているのだろうと思っていたのに。

変化のない日々に飽きてしまった。

常に仕事があるというのは、ありがたいことです。海で仕事するってロマンがあります。荷物を送り届けた先で感謝されます。

しかし 時速に換算して20㎞程度しか出ない船で毎回同じ港から同じ港へ。港に着いても上陸する暇などありませんから、そこの観光地も行ったことはありません。週3回通う場所のことをほぼ知らないのです。

海は季節によって表情を変えますが、基本的には危険度が違うだけです。毎回同じ岬を見ながら進路を変えて、同じ灯台を確認して船首の向きを調整します。毎回同じです。少し横に流されるくらいですね。

潜水艦では食事が唯一の楽しみだと言われますが、貨物船も同じようなものです。まして私の乗るような小さな貨物船にコックはいません。料理は甲板長が担当していましたが、2種類しかないメニューはコクのないカレーと甘すぎる肉じゃがでした。

私が船員を辞めて土木作業員へと転職した理由

合理的とはいえない親族経営の実態に冷めてゆく

そんな私に転機が訪れたのは 船長になって数年たった頃でした。私は親族の経営する海運会社に所属していたのですが、そこの内輪もめに巻き込まれてしまいました。海運業は命がけの仕事です。

また 船自体は安いお金では買えません。過当競争を防ぐ目的だと思われますが、俗に「トン数」と呼ばれる船に積み込める重量に応じた権利金まであります。定期検査の費用も大きいのですが、その分 親会社から支払われるチャーター料金も結構な金額です。

つまり海運業は、初期投資も運航経費もかかる上に、一歩間違えると命の危険まである職種ですが、いったん軌道に乗るとそこそこ良い暮らしが保証されます。㈲○○海運の相続争いが水面下で進行していました。

法事のたびに一族を仕切ろうとする叔父、会議のたびに「僕は出席しなくていいの?」ときいてくるいとこ連中。うんざりでした。

実は私の年金が

体調を崩しながらもこの仕事を続けていたのにはやはり陸上で働くよりお金を稼げるという魅力があったからです。船長として乗り込むようになってからは入社当時のおよそ倍の手取りをもらえるようになり、同級生の集まりでも割とリッチなグループでしたね。

まあ医者や歯医者や外資系の友達は別格でしたけど。ところが、年金特別便が届いて私は受取予定の額の少なさに疑問を持ちました。若いころ不払いの時期があったとはいえ 船員保険はこんなもんじゃないだろう。

休暇を取り訪れた年金事務所で15年間ずっと県の最低賃金レベルで申告されている自分の給与に愕然とし、同時にこれはもう無理だということも悟りました。親族会社から手渡しでもらっていた給与は現金でしたし、明細も入っていませんでしたからね。

「これは圧倒的に僕が不利ですよね」という質問に係の人の返答は「いろいろ調べる方法はありますが、最終的には会社の方にお願いすることになります。」でした。

精神的に追い詰められて

最終的に辞める決断をする頃には体調不良だけでなく精神的にも追い詰められいたように思います。私は船長職についていましたが当直中に軽微な事故を起こし、うながされるように退社しました、結局上司という名の親族に見放されました。

寝るだけの荒れた自宅とそのローンだけが残りましたが、親から継いだ土木会社で人材を探していた友人に声をかけられました。外仕事でスーツを着なくてもよいという船員との共通点のせいか土木仕事に対する抵抗はまったくなかったです。

実際ここ10年ほど土木現場にいますが、ロープの扱い方や玉掛け、危険に対する心がけ、天気図の解読など船員の経験を活かせる場面はけっこうありました。

仕事仲間にも恵まれ、自分としては良い決断だったように思います。

船員を辞めるべき人・辞めないほうがいい人

私は 追われるように船員を辞めましたが、船員が魅力のない仕事とは思っていません。

たまたま 自分のことを必要としてくれる社長が私の周りにいたから 幸いにも土木会社の現場監督という仕事につくことができました。個人的には転職するなら外仕事がおすすめですが、船員を辞めようかと考えているあなたに 次の仕事のあてはありますか?というより何か心ひかれる仕事がありますか?そこは やはり考えておくべきことだと思います。

辞めるべきではない人

  • 海に関わる地域で育ち海の仕事にあこがれていた人
  • 船以外での陸上の仕事の経験がまったくない人
  • 家族経営ではない比較的大きな船に乗っている人

上記該当する人はもう少し考える時間を持つことをオススメします。船は同じ交通や運搬の手段といっても陸上のトラック・バスとは本質的に違いがありますよね。海を身近に育ったかどうかでそのセンスは身についていくように思います。

操船技術 特に接岸離岸の感覚やとっさの細やかな判断の差はセンスを持っている本人は意外と自覚がなかったりします。そういった感覚は陸上の仕事で活かせる機会はほとんとないかもしれません。

陸上の仕事に活かせるのロープの結び方くらいです。船員がよく使う「おかのしごと」の経験がまったくないのに安易に「おか」にあがるのは良い判断とはいえないかもしれませんね。

また海員組合が大きな影響力を持っていた時代に船員の待遇はいろいろな面で改善されましたから、大きな会社で働く船員の手当や休暇等は恵まれている場合が多いと思います。

客船等で予備船員の人数をしっかり確保しているような優良な会社に従事している船員の方は、辞める前に「おかのしごと」の実情をしっかり調べて比較検討したほうが良いと思いますよ。 

辞めてもいい人

  • 会社に対する不満が大きい人
  • 体調を崩してしまった人
  • 具体的に次の仕事が見つかっている人

海員組合は確かに船員の待遇改善に尽力してきたと思いますが、最近は船員の慢性的な人員不足もあり、船員を取り巻く状況は変化してきています。命がけの職業に従事しているのに会社に大切にされていないと感じているのなら、命のかけ甲斐もありませんよね。

おまけに船員は不規則な就業時間が常態化しています。わたしも全部足したら一日あたり6時間寝ていることになるのかなぁという状況でした。自分の体調は自分でしかわからない部分があります。

バランスが崩れて本格的な病気になる前に決断したほうがいい時もあると思います。何も決まっていない状態で船をおりるのはあまり良い考えじゃないと思いますが 良い条件で自分を必要としてくれる会社が見つかっているのなら思い切って「おかのしごと」に変わるのも良い選択かもしれませんね。

船員からのおすすめ転職先

土木会社

まず、外仕事から外仕事、体が資本という共通点があります。また、土木一筋で働いてきた人からも同じような感覚を持たれていてわりとすんなりと溶け込めたいう感覚があります。

ただ、船の仕事は儲かるし年金も優遇されているのになぜ辞めてしまったのかとよく尋ねられましたが…。また、船員時代、他の船が欠航するような時に航海することで荷主の信頼を獲得して存在感を示していました。

自分たちは自然の脅威を認めたうえでいろいろな航海技術を駆使して船を走らせていました。土木工事にも危険な作業はたくさんあります。

危険な作業を危険なままで作業するのではなくいかにリスクを減らして安全に作業するのかという点で経験と知恵が大切なのですが、これは海の仕事とも共通する考えだと思います。

運送業

「こんなひどい天気にありがとうございました」船員はこんな言葉を聞く機会が多い職業ですよね。荷物を届けて感謝される時が運送業に従事していて良かったと思える瞬間ですが、トラックによる配送や宅配をしていても同じように感謝されることはあると思います。

また船の運航で培った危機管理を同じような感覚で活かせる職場ではないでしょうか。エンジンは何の上で回っているのかと船長講習で問われて「海の上」と答えたら0点、「油の上」と答えて合格、「それを動かす人の真心の上」と答えてハナマルだと教わったことがあります。

船のエンジンを動かす時に注意していた「匂い」「見た目の変化」「音の変化」は車でもトラックでも応用できそうな気がします。

気象予報士

いつも真剣に見ていた天気予報を職業にするのも良いと思います。

「波の高さ2~2.5ḿ 海上では風速10ḿ以上」という予報が かなりアバウトな表現であり台風と違い季節風は海上では予想をはるかに超えて吹き荒れる時もあるということを船員は知っています。

気象予報士は狭き門ですが、「観天望気」で培った経験則と最新のコンピューターによる統計を基にした予想をわかりやすく表現できる予報士がそろそろ出てきてほしいと思います。

船員時代、台風の進路予想に軍が予想したサイトを使っていましたが、軍事行動だけでなく経済活動にも天気予報は大きな影響を与える大切な仕事だと思います。

まとめ

自分の適性とか天職とかを想像したり空想したりするのは若いころの話で実際はいろいろな偶然が重なり必然になりすまして今があるように思います。偶然であれ必然であれ

他人との出会いと別れは必ず自分の生き方になんらかの影響を与えています。船員という職業についた時のこと、船員としてどう過ごし来たかということ、なぜ今辞めようか悩んでいるのかということを出会った人たちのことも含めて考えると きっと今の悩みの答えが見つかるような気がします。

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この記事の監修者

株式会社eia 大嶋

 

この記事の企画・監修者は株式会社eiaの大嶋です。クラウドソーシングサービスより実際の体験談の執筆依頼・インタビュー調査した内容をまとめた記事になります。

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