あなたが現場監督として土木・建築・電気工事・通信・管工事・造園など、いずれの業界にいるかにもよりますが、基本、どの業界も現場監督はきついですよね。

私は土木・建築をメインとする東京都内の工務店で施工管理を10年ほど勤めましたが、両親の高齢に伴い、地方の実家を継ぐために退職しました。建設業に対して面白さ、やりがいを感じた時期もありましたが、家族を犠牲にするような生活が続いていたのが退職理由の一つでもあります。

土日でも仕事でまともに家族と過ごせませんでした。子供が熱を出した時でも、休みを取ってやることができず「ママがいるから大丈夫だよ」と言って仕事に出るときは、罪悪感というか無力感というか、とてもいやな気持になったのを今でも、覚えています。

決定打になったのは、実家で父が転倒して大けがをし、介護が必要になったことをきっかけに、前職の退職を決意いたしました。

現在、私は幸か不幸か、施工監督という仕事から足を洗うことができずに、鉄道事業を行う今の会社で発注者側監督者として勤めています。以前の工務店勤務の時に比べると、年収は下がりましたが、家族と過ごす時間が増え、気持ちにもゆとりができたなと感じます。

仕事内容は、補助金を使った工事が多く、国土交通省と国庫補助の協議・申請・確認検査の受検を担当しています。

また、鉄道工事は、内容によっては国の認可を得てからでないと工事ができず、それらの「鉄道施設変更認可申請」という特別な手続きも担当の一つです。最近では、ガス管(本管)の軌道下横断工事の施工協定締結や施工管理も行っており、その特異性から仕事に対する新たなやりがいや充実感も感じます。

工務店時代を振り返ると、あれはあれで充実していたけれども、思い出されるのはつらいことばかりです。少し愚痴っぽくなるかもしれませんが、もし何か私の当時の苦労がご参考になればと、少しお話させていただきます。

現場監督を辞めたくなる理由

給料が安い。やることが多い。休みがない。

現場監督とは「主任技術者」や「監理技術者」を指す場合が多いです。求人紹介のサイトなどでは平均年収が良い職業と評価されています。

しかし、これは見かけ上の話。労働時間はとにかく長いため、本当の労働時間を給料で割り算したら最低賃金を下回るんじゃないかと思います。普段の私の仕事は次のような感じでした。

日勤

日中は、ほぼ現場での仕事になります。下請け業者・職人への指示、打ち合わせ、資材、機材の納品確認、出来形、品質のチェック、工事写真撮影、検査立会を行います。

途中、工事仕様に変更が入る場合もあるし、トラブル対応も行います。事務処理に入れるのは現場が片付いて、作業員が帰った夕方5時過ぎからです。工事報告書(日報・月報等)や各種検査証明書整理、工事写真整理、実行予算との差異確認、翌日の資材、機材の納品時間、数量のチェック、工程管理などやることは山積みです。

私は20時くらいに疲労のピークがきました。しかし、諦めたら試合終了です。翌日の段取りをせずに帰ることは試合終了を意味し、翌日の現場は火の車です。23時前になんとか仕事を終えて帰宅。

夜勤

夜間工事を行う場合は、またさらに大変です。昼夜逆転の仕事は、仕事内容が一緒でも、体に「倍」堪えます。目地の段差や、仕上がり具合は昼間見るものと夜見るものでは感覚が違い、灯光器の明かりだけでは判断を誤る場合もあるのです。

また、事前に近隣への周知、案内をしているとはいえ、夜間の振動、騒音の苦情も出ます。現場の作業が終わり、朝8時に跡片付を完了しても、現場監督にはまだ仕事が残されています。

朝、普通に出勤してきた発注者側監督者に昨夜の工事進捗や問題点を報告し、今夜の夜間工事の打ち合わせをします。場合によっては昨夜実施した工事現場のチェックをしてもらい、それが終わってから、夜間には行えない資材、機材の発注にとりかかります。

これらが終わると、時刻はもうお昼。家には帰らず、会社のソファーで仮眠をとります。

こんな調子ですから、当然、土曜日も仕事です。「週休2日」を謳っているところでも、どの会社も仕事をしています。あなたの会社もそうではないでしょうか?

振替休日は発生するだけで、実際にとる暇などありません。また、残業は上限があり、月30時間までしかつきません。ブラックではありますが、業界では珍しいことではありません。

こんな状況なら辞めたくなるのは当然と思うのは私だけではないはずです。

現場のヒエラルキーがひどい

現場において、立場において、そして会社内において、あらゆる場所にヒエラルキーが存在しています。
 
ヒエラルキーで頂点に立つのは、間違いなく作業員(職人)です。あなたの現場もそうではないでしょうか?昨今の人手不足で、彼らは引く手数多。特に専門性の高い「石工」「軌道工」あたりは、腕も口も強いのばかりです。

もし、現場監督の技術力不足や知識不足、段取りの悪さが露呈すると「あの現場監督はダメだ」と、まるで言うことを聞かなくなります。

それこそ、現場監督の見えるところ見えないところで、まるで「学級崩壊」です。勿論、技術の未熟な監督に対する歯がゆさ故、彼らなりの「良いものを作りたい」というプライドがそういった行動の根底にあるのでしょう。

それに職人の多くは、日給月給の給与体系や個人事業主の人が多いです。もし現場監督の段取り不足のせいで怪我をさせられたら自分の所得が減るわけだし、効率よく何カ所も現場をこなしたほうが稼ぎもよくなります。

彼らの考えがわからないでもない。だからこそ、現場の空気は厳しくなるわけです。

しかも、最近になってOJTといった取り組みに関心を見せる企業もチラホラと見られますが、中小の工務店では「見て覚える」という習わしが主流です。

先輩や上司にわからないことを聞くと、怒りながら教えられます。初めて聞くことでも、怒鳴りながら指導が基本です。気を遣って、自分で解決しようとすると、今度は聞かなかったことを怒られます。

そして「仕事が終わらない」と相談すれば「終わるまでやれ」と返ってくる有様。社内においても年齢が若いうちは苦労が絶えません。

若い人が入ってこないし、新人はすぐに辞める

若手のうちは、自分の現場が動かない日でも、先輩の現場に駆り出されます。丁張り、測量、検査・立会の補助などをします。「3K」のイメージの強い建設業界に、若手はなかなか入ってきません。

今の若者は「ものづくり」、「達成感」、「地図に残る仕事」などの釣りワードには騙されません。そもそもボーナス無し、サービス残業有りのブルーカラーを親が勧めるわけがありません。

各地で発生した震災の復興はまだ続いていますが、いずれ落ち着きを取り戻していくでしょう。2020年の東京オリンピックの準備もありますが、その先にあるものはいまだ見えてきません。実際に、給料が上がったという声はあなたの周りで聞かれますか?

給料はそのままで、物価ばかりが上がるという声が聞こえませんか?今は戦後最長の景気回復期間と言われていますが、公共工事の数は未だ回復していません。そのため、若手の技術者は腕を磨く機会を得られていません。

ベテランの技術者から退職を迎える前に技術を継承できなければ、技術力の空洞化が懸念されます。

退職したくてもできないのが現場監督の仕事!退職のタイミングは要注意です!

建設業は言わば「小ロッド生産」の典型で、その事業毎に固有の環境や工期に合わせた工法や打ち合わせ事項がたくさんあります。つまり退職ということになれば、現場監督しかわからない事は必然多くなります。

本来、公共工事のみならず建設工事の多くは予算処理の関係上、年度跨ぎになる場合は多くはありません。したがって、年度末退職ということであれば工事の引き継ぎは少なくはなるでしょう。

しかし、工事の受注内容、契約金額によっては工事完了から数年たっても、(公共工事などでは)会計検査への対応などを求められる場合があります。きっちり、引き継ぎをした部分でも「聞いたほうが早い」と電話がかかってくることもあります。

私は退職しているにもかかわらず、元上司から「会計検査の日だけ、ピンチヒッターで出てくれないか?」と冗談とも本気とも取れない電話をもらったことがあります。さすがにその”期待”には応えられませんでしたが、かなりの問い合わせをもらいました。

これらに対応しなければ、建設業の場合、横のつながりもあるため、悪い評判や、後で現場が重なった時に仕事がしづらくなることがあるので無下にはできません。

つくづく、仕事上の「けじめ」はつけられないものなのだと感じました。

現場監督から転職する前に考えてほしいこと4つ

養う家族がいるかどうか

まず、今の仕事を退職して転職先を探すという方法はお勧めできません。確かに、転職先の情報を集める時間は確保できますが、収入の途絶は大きなリスクが伴います。

特に、勤続年数や経験年数が短い人は、採用する企業側からすれば、「採用しても我慢できずにまた辞めてしまうのではないか」と及び腰になるでしょう。

子供の進学、家族の年齢、病気、将来のこともよく考えてみてください。

住宅ローンがあるかどうか

転職して、給与が増えればいいのですが、所得減となった場合に、返済が可能な範囲かどうかを慎重に検討してください。

「借り換え」という形で住宅ローンの月々の支払額が減額できれはせ良いのですが、その場合、転職したことによる勤続年数がネックになり、現実的に借り換えは無理だと思います。

また、仮に借り換えができたとして、借り換えに伴う償還の事務費がかかったり、個人の信用低下から金利が従前契約と比べて上がる可能性もあります。

また、ボーナス時に多く返済をする契約となっている場合も気を付けてください。そもそも転職先はボーナスがある会社なのか、いくらぐらいもらえるのか、支給日は返済に間に合う日なのかなどを確認しておかなければなりません。

過去に何度も転職していないか

転職をはじめ何かを行動に移す前に3回我慢してみて欲しいのです。諦める前に、怒る前に、辞表を出す前に3回はこらえて欲しいです。

我慢しているうちに、なんとなく乗り越えることができたら、次も頑張ってみる。その繰り返しができないと、仮に転職ができたとしても今と同じような条件の会社にしか転職できないと思います。

現場監督の世界では10年のキャリアが主任技術者の要件として取り扱われる場合があります。あなたが積み上げているキャリア(実務経験)とは、それだけ評価されるものなのだと再認識しましょう。

キャリアの有無

さらに、現場監督という仕事においては監理技術者の要件となる1級(土木・建築・電気工事・管工事・造園)施工管理技士を取得していない人は慎重に行動するべきです。こういった資格のない「無印」の監督では、よほどのめぐり合わせがない限り、良い求人には当たらないでしょう。

参考までに転職は施工管理の資格だけではなく、その他の技術も身につけていればその攻め方が大きく変えられます。いわゆるバイプレイヤーというやつです。

私の元同僚で技術士にチャレンジしている仲間がいました。周囲からは「現場が技術士取ってどうするよ、わかってねーよ」などと嘲笑されたりもしましたが、彼は、現在転職して土木系コンサルで橋梁点検を担当する技術者をしています。

折からの努力が報われたのだと思います。この例によらなくても、例えばCADができれば、設計や開発の担当者として採用される可能性があります。また宅地建物取引士の資格もあれば、営業事務として採用される選択肢も広がります。

もちろん、新しいことに取り組むことは非常にエネルギーがいりますし、費用も掛かる場合があります。そういった無理をせずに、今のあなたにとって、得意なフィールドや技術があれば、まずそれを伸ばす取り組みをしてみてください。

現場監督から転職を成功させるポイント

どうすれば現場監督のキャリアを生かせるか

どの業界でも同じ事が言えるかもしれませんが、転職の際に企業側から求められるのは「経験」と「資格」。それらを前提とすると結局のところ、自分が経験してきた今までと同じ業界しかチャレンジできません。

そこで、私が取った対策は立場を変えることでした。同じ「施工管理」の仕事でも、今までの受注者側監督者から発注者側監督者にスイッチできないかということを考えました。

本来、発注者も受注者もパートナーシップに則って仕事を進めるべきです。が、現実は違います。発注者側監督者のほうが全然立場が上になります。お金を払う側の現場監督なのですから、同じ「施工管理」でも発注者側と受注者側では「天と地」「月とすっぽん」です。

「打ち合わせ」も、誤解を恐れずに言えば発注者側の一方的な指示で済みます。しかし、基本的に発注者側監督者の採用は非常に件数が少ないです。

団塊の世代の退職により、発注者側においての技術力の空洞化は特に深刻な問題となっていますので、裏を返せばこの時代背景はぜひともないチャンスのはずですが、勤務希望地が一致しなかったり、経験のない仕事内容だったりと、自分の経験と一致する仕事には運命的なものが必要になります。

そのため、あせらずじっくりと希望の求人を待つというのも一つの戦略になってきますよ。

転職エージェントを利用する

あなたは、「もうなんでもいいから、現場監督の仕事を辞めたい」と考えていたりしませんか?

しかし、同時に「今より給料が良い会社がいい」「休みがとれる会社がいい。」「職人のような個人事業主ではなく、福利厚生のしっかりした企業に勤めたい」などのたくさんの希望も持っていらっしゃいませんか?この相反するような考え方は、現実には1人の人間の中に同居するのです。

その場合は「転職エージェント」と呼ばれる転職サービスを有効活用すべきだと思います。転職エージェントでは、キャリアアドバイザーが求職者と企業の間を仲介し、マンツーマンで多くのことをサポートしてくれます。

特に、現場監督のような休みが取れない職種は、必ず利用すべきです。なぜなら、会社や仕事内容の概要を調査はもちろん、面接のセッティング、労働条件や入社日まで調整してくれるからです。

1社=1枚が当然の履歴書も、転職エージェントに提出する1枚のみでよいため、負担が少なくて済みます。

また他の人に知られることなく、転職の情報を短期間に効率よく集められる点もメリットでしょう。意図せずぽろりと人に話してしまったり、相談してしまったりして転職活動をしていることが会社の知るところとなったら大変です。

人の口に立て板は立てられません。非常に居心地の悪い思いをするでしょうし、場合によっては、仕事上の評価や信頼を失うこともあるかもしれません。そもそも、転職は人に相談しにくい話です。

第三者にアドバイスを求めるのでしたら、ノウハウを有し、情報管理の徹底された転職エージェントに任せたほうが安心です。また、他の業界に進みたいという場合には、情報や知識、経験をほとんど持たないまま転職活動を行うことになってしまいます。

自分という人間を一番わかっているのは自分自身ですが、転職のように他人からの客観的に評価される場面では、客観的に自分を分析してくれる存在が、いろいろな見方を教えてくれると思います。

まとめ

最近、ニュースでは働き方改革法案がよく取り上げられています。長時間労働と労働力不足を解消するための改善対策のはずですが、現場監督の立場からは、「どうせ仕事終わるまで帰れないんだから関係ないよね」と冷ややかな反応が聞こえそうです。

また、スーツで現場に来る施工管理者が、現場監督に一方的に指示を出して満足気に仕事の充実感とコーヒーを味わっているさまには辟易します。

これは、私だけが特別歪んでいるわけではなく、あなたも同じ思いなのではないでしょうか?

ですが、もう現場監督の仕事に嫌気が差して辞めたいと思っても、現実は想いだけでは転職できるません。なので、思い悩むだけでなく少しづつでいいので次に向けて行動するようにしてください。

でないと、今の状況からは一生抜け出せませんよ。