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「犯罪者の矯正という職務を通して社会に貢献したい。」そう考えて刑務官を志願した方は多いのではないでしょうか。被収容者に毅然とした態度で接し、社会復帰へ導くなんて魅力的ですよね。私自身も社会の役に立ちたくて刑務官の道を志しました。

そんな刑務官の中でも処遇勤務者は、最前線で被収容者に対応するまさに刑務所の要である存在ともいえます。

私は大学中退後、半年間刑務所で処遇勤務に就き、フリーターをして学費を貯め、現在はリハビリの専門学校に通っています。

もしかすると、あなたもかつての私のように「意義のある仕事で待遇も良いが、続けていく自信がない。」と悩んではいないでしょうか?

この記事を開いてくださったあなたは、転職を考えておられるかもしれません。そんなあなたに、私の転職経験が少しでもご参考になれば幸いです。

【この記事を書いた人の経歴】
刑務官⇒半年で退職⇒フリーターを半年⇒リハビリ職の専門学校に入学

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刑務官は病む…私が辞めたくなった理由

職場を飛び交う怒号

これは職業柄仕方のないことなのかもしれませんがとにかく刑務官同士での指導や教育は社会一般のそれから逸脱していて単刀直入に言えばパワハラまみれでした。具体的には、大きな怒鳴り声、恫喝めいた暴言、武道訓練という名のしごき、いくら命の危険があり厳しい公安職とはいえ度が過ぎてると感じました。

私が勤務していたのが収容分類級Bの施設だったこともあり、日常的に暴力団構成員相手に厳しく指導している刑務官の、迫力満点の罵声をよく浴びてました。大学時代、非常に厳しい体育会系のアメフト部に所属していた私でさえすっかり委縮してしまうほどのモノでした。

些細なミスの度に怒号を飛ばされるのは精神的に非常に辛いものがあり、当時の私はすっかり心をすり減らし抑うつ気味でさえありました。

寿命を縮める夜間勤務

夜間勤務はなかなかに辛いもので、深夜ひとりで行う見回り業務は常に睡魔との戦いでした。「階段に座り込んだら朝になっていて大目玉を食らった。」なんて先輩の経験談も覚えてます。

一応ある仮眠時間も非常に短く、焼け石に水でした。人手不足のため非番の次の日は普通に朝から夕方までの日勤に就かされた、なんていう別施設から来た方のお話もきいたことがあります。とても恐ろしいですよね。

また、守秘義務で詳しいことはかけないのですが以前私が特殊勤務についた際は、8時間勤務して24時間休みという勤務形態で、働く時間も寝る時間も8時間ずれるという非常に辛いものでした。いずれにせよ夜間勤務は心臓に多大な負担をかけ、手当をもらえるとはいえ健康上のリスクを犠牲にしたものでした。

居心地の悪い官舎住まい

これも前者二つに引き続き職務上仕方のないことですが刑務官の、特に新人で処遇勤務に就いてる者は刑務所近くの官舎に住むことを余儀なくされました。親の介護等の特別な事情がない限りはほぼ強制で、私も例外ではありませんでした。

さらになんと私の場合、独身者用の寮が少ないということで先輩刑務官と相部屋だったのです。先輩は非常に気さくな方で、私を飲み会に誘ってくださることもあり親睦を深めるという点では確かにメリットもありました。しかし、非常に厳格な階級に根付いた縦社会にいて先輩に気を遣わないわけにはいきませんよね。プライベートでも気が休まることはなく、一人の時間を大切にし、社交性も月並みな私にはこれがかなりのストレスでした。

業務体系と張り合いのない業務

肝心の業務も単調で自分に裁量のない、言ってしまえば味気ないものばかりでした。そもそもお仕事なんで、楽しさを求めるのは違うと言われればそれまでなんですが、それにしても面白くないですよね。

そのくせ私の場合は暴力団員や凶悪犯を相手にしなければならず、緊張感と危険性だけはつきまとい、彼らには恨まれるばかりで感謝されることなんてめったにありませんでした。当然モチベーションなんてものはありません。

また地味に嫌だったのが、仕事内容がころころ変わるくせにセキュリティの都合上マニュアルがないことです。新しい仕事になるたびにわざわざその仕事をしてる先輩を探し、一からメモを取るのが手間でしたね。初対面の先輩ばかりでいちいち緊張したし、なかなか先輩が捕まらなくて胃が痛かった思い出もあります。

それに人ごと、工場ごとにやり方も違ったりしていて、その齟齬で怒鳴られるなんてこともしばしばありました。

処遇以外に務めていればまた違ったのかもしれませんがとにかく新人は数年間、下手したら数十年は処遇部門に所属と聞かされ絶望した記憶があります。刑務官の花形である工場担当はやりがいこそありそうなものの、その難しさと人気からこれもなれるまで何年かかるかわからないとも言われました。

そんなこんなで私はすっかり心が折れてしまいました。

【補足】上項で書ききれなかったあれこれ

他にも上で書ききれなかった理由は様々あります。仕事の組まされ方次第ではろくに昼食をとる時間がなかったり、あっても食事中に非常ベルが鳴れば現場まで全力疾走しなければならなかったりと「通い懲役」と自らを嗤う刑務官ですが「その実、懲役囚以下では?」と思うことも多々ありました。

閉鎖環境下で大半が官舎か、そうでなくとも刑務所の近くに住んでると職場の人間同士の噂がもっぱらの娯楽だったりします。噂話ならまだしも他人の悪口ばかりなんてことも少なくありません。狭くて閉じたコミュニティのもう一つの弊害に、上層部の派閥争いが結構激しかったりなんてことも。武道拝命者のひいきも露骨に感じましたね。

まだまだ言いたいことは山ほどあるのですが、このままだと刑務所の悪口だけで終わりそうなのでこれくらいにしておきます。それくらい嫌な思い出ばかりなのです。当然私が退職を決意するには充分なほどでした。

半年で刑務官を辞めてリハビリ職の専門学校に入学した理由

社会的、身体的、知能的弱者と接する機会が多かった

刑務所は基本的に社会的弱者ばかりだったので、日本にこんな劣悪な環境で生まれ育ち、犯罪に手を染めざるをえなかった人たちがいることを知るには良い機会でした。

抑制が効かず、酒や煙草、薬物に溺れる人間も少なくないため健康な被収容者はむしろ少数派で、なにかしら病気を患っているのが当たり前だったと思います。社会の高齢化の波は刑務所内にも押し寄せ、施設は半ば介護施設の様相を呈していました。

加えて、私が勤めていた施設が医療重点施設だったため心身面で障害を持った被収容者も数多くいました。

医療従事者と接する機会が多かった

前述したように建物の中に医局が入っているタイプの刑務所だったこともあり、看護師や医師、歯科衛生士を始めとした医療従事者の方々とお仕事をする機会も多かったです。

彼らはどんな罪を犯した人間だろうと分け隔てなく治療し、被収容者も心の底から信頼し感謝しているように見えました。それが仕事なので当然のことなのですが、当時の私には一人の人間として被収容者に係わっている医療従事者がうらやましく思えてならなかったんですよね。

また、上官と違って医局の方々は私のことも人間扱いしてくれ、まさに心のオアシスでした。医務連行の業務の日は心穏やかだったことを今でも鮮明に思い出せます。医務連行の木札の横に自分の名前があるとその日はもう嬉しくなったものです。

作業療法との出会い

そんな感じで漠然と医療従事者へのあこがれを抱きつつ、パチンコ店でアルバイトしていた私に突如転機が訪れます。

刑務官をやめてしばらく後、言語聴覚士を志す妹がその専門学校のオープンキャンパスに行くということで、送迎と付き添いを兼ね私も一緒に参加したときのことです。

それまで作業療法士という職業すら知りませんでしたが、見学の際にお会いした作業療法学科の先生は真摯に私の話に向き合ってくださり、初対面にも関わらず私はこれまでの経緯と前職の辛かった経験についていつの間にか吐露していました。

先生の人柄と作業療法士の仕事内容に触れ、その両方に惹かれて作業療法士の道を志したのです。

【補足】退職後の正直な感想

私は刑務官の仕事を退職したことに対し後悔は全くありませんでした。また、刑務官を経験したことについて、むしろ貴重な、非常に良い経験ができたと前向きにとらえています。

大学での専攻は物理学だったので、医学という道は私にとって全く未知の領域といっても過言ではなかったのですが、分野として非常に興味深く、モチベーションを高いままに日々学習に取り組むことができました。

刑務官の仕事とは打って変わり、人に寄り添い助ける仕事は私に向いていると感じ、つくづく職業での適性がその人生の質をがらりと変えてしまうなと実感する日々です。

ここで、ひとつ刑務官としてこの記事を読み退職を考えているあなたに対し、忠告しておきたいことがあります。

刑務官として経験を積む、あるいは実績を残すなど、その職務を全うすればするほどその人格が刑務官として適したものに変容していくということです。

これは初等科研修でベテラン刑務官から何度も聞かされた話であり、半年間しか刑務官を務めなかった私でさえ退職後明確にその弊害を痛感しました。「刑務所の中の常識は社会の非常識」刑務官の皆さんなら一度は聞いたことのあるフレーズですよね。

おそらくあなたが思われているよりもその社会性の乖離は深刻ですよ。退職する際はくれぐれもご注意ください。

刑務官を辞めるべき人・辞めないほうがいい人

辞めるべきではない人

  • 刑務官として10年以上勤めている方
  • 精神手に敵には特に苦痛はないが、体力面で悩んでいる方
  • 武道拝命で刑務官になった方
  • 既婚者で家族を扶養しており、再就職のあてがない方

上記に当てはまる、特に上の二つの項に当てはまる人は辞める判断を早々に下してしまうことをお勧めできません。前述でもあった通り刑務官として働けば働くほど社会で他の仕事をすることが困難になってしまいます。

国家公務員は順当に続ければ昇進試験を受けなくともそれなりの給料をもらうことができますし、さらに階級を上げている人はなおさらです。

刑務所の中にもたくさんの部署があるのでその中から選ぶか、矯正局などの関連組織に努めるなりして環境をその中の範囲で模索しましょう。縦社会なので続ければ続けるほど立ち位置は基本有利になるものです。

武道訓練がきついと感じている方でも、体力試験を問題なく通過した基礎があればそのうち慣れます。武道訓練は数年たてば免除になりますし辞める理由にするのは賢明ではありません。

また、武道拝命者ほど優遇される仕事はこの仕事以外でそうそうありませんよ。とにもかくにも刑務官はとにかく待遇は社会平均からしたら良いほうであるし、信用も完璧なので各種ローンも通りやすいです。

若くして良い値段する外車を乗り回す刑務官も少なくありません。家族を養っている方はその辺も踏まえて熟慮の上決断しましょう。

辞めてもいい人

  • 若く、刑務官としてまだあまり経験を積まれていない方
  • 自身の仕事に一切やりがいを持ってない方
  • 性格面、精神面で向いてないと感じている方

上記に当てはまる方は、退職を考えるのも一つの選択肢として悪くないでしょう。先に述べたように、この仕事は長く続ければ続けるほど辞めづらくなるものです。刑務所側も刑務官の離職率の高さを自覚しているようで、事実私も拝命当初に「辞めるなら早いほうが良い」言われましたし退職しても「他の仕事で元気にやって行けよ」と激励していただきました。

それほどに刑務官という職業は向き不向きが激しく、辞める人も多いのです。私の退職のときに実にスムーズにオートマチックに手続きが進み、そのことを体感しました。

仕事が楽しいことばかりでないのは当然なのですがやりがいが一切ないというのも考え物です。「どうせ今頑張っても3年後に独身のままなら辞めるだろうな」と考えている人は、いっそのことその決断を今考えてみてはいかがでしょうか。

刑務官を辞めたいあなたに最後に伝えたいアドバイス

退職するタイミングを考慮する

さきほど辞めるなら早ければ早いほうが良いといった矢先にこれは矛盾するようで申し訳ないのですが、退職に適したタイミングというのが必ず存在します。

一つの指標として勤続手当があります。公務員でいうボーナスで、これが年二回ほぼ必ず支給されますがこれが馬鹿にならない額なので、支給の時期が近いならできるだけ受け取って退職するべきです。ほかにも退職金が出る最短勤続期間、失業手当受給資格の年数も同じく気にかけるべきですね。

社会的信頼が絡む事項に留意する

刑務官を辞めることの大きなデメリットに社会的信用の喪失があります。具体的にはクレジットカードを作ったり、ローンを組んだり、部屋を借りたりするときなどに国家公務員という大きな信頼の後ろ盾を失うために苦労することが予測されます。

これからそういった類の契約を考えている方は努々そのことをお忘れなきよう、場合によっては信頼のある状態で済ませてしまったほうが良いものはやってしまうというのも手ですね。

人格面の変化を自覚する

これまで散々この記事でも述べてきたことですが、刑務官の職務が一人の人間の人格に及ぼす影響は甚大です。

退職したのち、すぐに就職活動を始めたい気持ちもよくわかります。しかし、ここで一度踏みとどまって、旧友とあって話してみたり、接客業のアルバイトを始めてみてはいかがですか?

あなた自身の性格は少なからず拝命以前のものからは変容しており、休息がてらその内面と向き合ってみるのも悪くないでしょう。

まとめ

結局のところ退職するかしないか最終的な判断を下すのはあなた自身です。辞めるなら早いに越したことはないと言われる刑務官ですが、それでもやはり退職は人生の一大事。この記事を読んでいるあなたは、なかなか決心がつかないままなのではないでしょうか。

「一生この仕事を続けていく覚悟があるのか。」あなたの胸の内によくよく聞いてみてはいかがでしょう。仮に今耐え忍ぶことができても3年後辞めてしまっては元も子もありません。

ですがなんの計画もなく仕事を辞めてしまうのは少し軽薄です。もしあなたに将来の展望が何もないのなら、やりたいこと探しから始めてみるの良いかもしれません。

人生を犠牲にしてまで職務を全うする必要はありません。

私のこの経験談が、あなたにとってわずかながらも糧になることを願っています。

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問:あなたが解決したいお悩みは?
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この記事の監修者

株式会社eia

 

この記事の企画・監修者は株式会社eiaです。クラウドソーシングサービスより実際の体験談の執筆依頼・インタビュー調査した内容をまとめた記事になります。

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